2013年1月20日日曜日

高校サッカー選手権  総括

今日で終わった高校サッカー選手権。
例年になく、スタジアム観戦をすることができたので、
雑感をここにつづっていきたいと思う。

■修徳高校×鳴門
東京の高校相手に、我が出身県の鳴門は、”応援力”の差で圧倒されていた。
そして、ピッチ上でもポテンシャルの差は明らかだった。
しかし、昨年に見た高校よりも、
ールを持つべき時×離すべき時のタイミングが
向上しているような印象を受けたのは良かった。
ただし、四国という地理的要員がもたらす、タレント総力の差は埋めがたい。
年々全国レベルからは遠ざかっているのは、気のせいか。

■野洲×青森山田
「対照的なスタイルが衝突した」という意味では、
僕が観戦したなかでは、最も興味深い試合だった。
「試合経過があっという間」という試合。
ほとんどハーフウェイラインから5m前後?という、
極端に高い最終ラインを敷いた青森山田と、
高密度なパス&ドリブルで掻い潜ろうとする野洲との戦いは飽きることはなかった。
もっとも、野洲のサッカーは評価の別れるものだったのだろう。
一部識者は、天皇杯でも敗れたG大阪と並べて、
「ポゼッションの意味」を論じていたし、「スペースの意識」という観点でも
”サッカーの常識”からすれば、”突っ込んでいる”だけにしか見えなかった。
実際、前半の彼らは魅せるだけのサーカス的なサッカーをやっていた。
ただ、青森山田GKが負傷した際の中断を経て、
スペースを攻略していく(おそらく)通常のサッカーが形を見せていたように思う。
あのプレスの中でも、前にボールを運ぶ姿勢を見せたのは評価されるべきだろうし、
それは、今の日本サッカーがトップレベルとぶつかった際に
明らかになる弱点でもある。
一方で、それが、”あえて”守備網に突っ込んでいく自爆となったとも解釈はできるが。
ただ、初戦ゆえの固さもあったかもしれない。
もしも、あの1試合を勝っていれば、
チームとしての総合力では十分な力を見せていただけに
上位進出は間違いなかったような気がする。
目指す方向はかなり特異だとは思うが、面白いのは確か。


■滝川第二×作陽
チーム力が点差に如実に反映された試合だった。
高校サッカーでは常連の2校だったが、その差は歴然だった。
その年での選手の質に大きく左右されるだけに、
滝川第二は”その年”ではなかったのだろう。

■立正大湘南×旭川実
旭川実は、実は昨年も1回戦の試合を見ていたのだが、
DFラインと中盤のブロック、そしてビルドアップの基礎技術の高さは目についた。
監督?チーム?のやりたい方向性がしっかりと消化されているチームだと思った。
立正大湘南は、試合前にチームマフラーを販売していたのが、印象に残っている。
母校以外の特定の高校へのファン意識というのもなかなか、面白いのかもしれない。

■桐光×作陽
青森山田と同ベクトルの桐光には少なからず注目していた。
というのは、昨年のプリンスリーグ関東1部で
FC東京U18、柏レイソルU18という強豪を抑えて1位に輝いていたから。
ポゼッションスタイルを目指すチームが多いなかを
勝ち抜いてきた組織力を見てみたいと。
実際、約束事を選手全員が意思統一しながら、プレーしている姿は
プロ並みの規律の高さを感じた。
アバウトな部分が目につく高校サッカーでは、
ある意味異質だったように思う。
中盤4人もそれぞれ個性が異なり、それがチームという組織を潤滑に動かしている姿には好印象を抱いた。
一方、作陽も滝川第二戦とは違って、
サイドのスペースをうまく使った大きな展開を見せた良いサッカーをしていた。
この大会で初めて、”サッカーらしいサッカー”を見たと思った。
(おそらく)あえて、純粋なCFを置かずに地上戦を挑んだのも、明確な狙いがあったのだろう。
最後の交代は、十分な”予感”があっただけに残念。
タラレバに過ぎないが、マイボールになるまでは交代をしてはいけなかったということだ。

■帝京長岡×京都橘
試合を見るまでは、あまり実情を知らないチーム同士の対戦だったが、
こちらも面白い試合だった。
京都橘の2得点までは一方的な展開になるかと思ったが、
以降の帝京長岡が見せたサッカーは、”質の高さ”で言えば、
今大会観たなかでは、ダントツに1番だった。
特に、小塚くんのプレーには目を奪われた。
ボールを置く位置、視野の確保、プレーの選択、キックの正確性は
間違いなく高校レベルを逸し、”将来性”という意味でも
見ているこちらをワクワクさせてくれた。
そして、4-3-3?を使うチームとして、両サイドを大きく使うサッカーは、
この前の試合、作陽と同じく、魅力的。
試合を見る中で、評価が大きく変化した高校だった。

■星陵×鵬翔
鵬翔は”守備のチーム”と思っていたが、
1人1人の技術レベルの高さを見て、高校サッカーの水準が年々高まっていることを実感。
突き放される度に追いつく、”不思議な力”を持ったチームだと。

■京都橘×桐光
正直言って、桐光にはガッカリだった。
国立に飲まれた、それが最大の要因だったらしい。
もちろん、京都橘からボールを「持たされた」ことが、
チームの良さを消してしまっていた面があるとは思うが・・・。
あれだけなすすべなく負けてしまう、何より内容のない試合になってしまったのには
あらぬ妄想(1週間の間にチーム崩壊?)まで起こさせるほど。
とはいえ、もともと、前線のタレントで一種の限界が見えていたのも確かだった。
松井くん次第!?のところも、大いにあった。
チーム力+個人能力というところで比較したときに、
2トップという最大の武器を持っていた京都橘の方に軍配があがったのだろう。
用意周到に戦った京都橘が、試合のなかでも成長を遂げていたところも印象的だった。

■鵬翔×京都橘
テクニック志向、戦術志向、そして没個性などが声高に叫ばれるなか、
鵬翔が見せた気持ちの強さ、また京都橘が持つチームとしての確固たるスタイルの確かさは、
とても大きな価値があると感じる。
サッカーにとって大事な、正確に強く蹴れること、そして次のプレーを考えたトラップが出来ること。
この2つのレベルが総合的に高かったチームが最高の舞台で最高の戦いを見せた。

■総括
・スター不在と言われるが、確実に底上げは図られており、この傾向が数年続けば自然現象的に相応のスターは生まれてくるのでは?
・「スター+10人」という見方自体が、そもそも古い考え方なのでは?
・バルセロナを筆頭とするポゼッションサッカー志向の高まりと、対照的な結果の因果関係は?
・なぜ、キックオフと同時にわざわざ相手へとボールをプレゼントするように、ロングキックを蹴るのか?
・ゴール前以外で、競り合わないシーンが目についた。高校レベルでは、2タッチ目でのボール奪取も有効かもしれないが、それでは空中戦に強い選手は育たないのでは?
・ロッカールームの涙を、キラーコンテンツにするテレビ局サイドの意図はこのままでいいのか?


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